木の効用について

  1. 1木材は、温度と湿度の調整機能を持っている。
  2. 2木材は吸音性と遮音性を持っている。
  3. 3木材は優れた断熱性を持っている。
  4. 4木材は光沢と質感があり視覚にも優しい。
  5. 5年輪のゆらぎが心地良さを生む木材。
  1. 6木材は適度な弾力性で衝撃を緩和する。
  2. 7木材の触感覚の良さは快適・安全のもと。
  3. 8木の持つ芳香物質が気分を爽快にする。
  4. 9木材はマイナスイオンをもたらしてくれる。
  5. 10木材は人間の情緒を育てる心の健康素材。

1.木材は、温度と湿度の調整機能を持っている。

家材としての木材は、切られても生きて、呼吸しており、室内の温湿度を一定の水準に保とうとする働きを持っている。木の柱に触れると夏はやや冷たく、冬は暖か味があっていつも心地良さを感じさせてくれる。
特に湿度調整能力は高く、高湿度になると水分を吸収し、一定の水準を維持する働きがある。実験でもビニール内装の室内は、百葉箱の中と同じく室内温度が激しく変化するが、ムク材内装の室内は湿度50%前後を維持する結果が出ている。
床も、木材を使うことで表面湿度が平均化して、ダニ、カビ、細菌類の発生を押える機能を果たしている。さらに、木材はその多孔質さから結露を防ぐ力も持っている。

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2.木材は吸音性と遮音性を持っている。

タタミとともに木材は、室内から発生する空気伝搬音を低音、中音、高音とバランス良く吸収し、不快感を残さず、適度な残響を残してくれる。コンクリートのようにいつまでも音を室内に残さず、吸音率は 250Hz の周波数ではコンクリートやビニールの20倍にもなる。
また木材は軽くて強いことが特長でありながら、遮音性もある程度持っている。同時に人間の耳には聞こえない樹木や自然界が発する超高周波音(都会では少ないが)は通し、五官の快感覚を育ててくれる。この自然界の高周波音は大体において 1/f ゆらぎになっており、マイナスイオンを伴っていると見られている。
音と木材の関係では、残響性とともに、音をまろやかにする特性があり、コンサートホールで多く使われるし、適度な共振性を生かして昔から楽器に良く使われている。

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3.木材は優れた断熱性を持っている。

普通の断熱材は強度がないため、他の材料と組み合せないと役割を果たさないが、木材は軽くて強度があり、断熱材とほぼ同等の断熱性を有している。これは木材がパイプ状の細胞の集合体で、中に熱を伝えにくい空気を持っているからで、例えばスギ材に比べるとコンクリートは20倍、鉄に至っては480数倍の熱伝導率となる。
鉄筋コンクリートの建物は、熱伝導率が高いので、陽が昇るとすぐに熱くなるくせに、保温率も高いため、明け方まで冷めないことになり、冷房を必然にするし、冷気もすぐ室内に持ち込み、暖房を必要にさせる。皮膚の表面温度は環境によって変化するが、床材料による足の温度低下は、コンクリートやビニールタイルが強く、木床が一番軽微とデーターされている。

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4.木材は光沢と質感があり視覚にも優しい。

木材には細胞構造による微少な凹凸があり、それにより光が散乱されるので「つるつる」も「ざらざら」もしない上質な光沢・ミクロな反射によって、機械の測定値以上の光沢感が得られる。また、光の方向による反射も樹種によって独特の光沢を見せるが、最大の特色は、紫外線を吸収し、赤外線を反射することで、「あたたかさ」を感じさせる要素を持っている。
視覚特性を担うのは、材面の木目と色調で、樹種と樹齢によりそれぞれの趣きを見せるが、針葉樹は、年輪の輪郭の明確さと色合いに妙があり、整った木目が多い。広葉樹は、材面に現れる導管が視覚に作用し、その走行、分布、配列と樹種による独特の色彩が加味されて味わいのある視覚特性を形成する。

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5.年輪のゆらぎが心地良さを生む木材。

ゆらぎとは、連続するものの間のズレで、機械的に均質なものからは生まれないが、自然界はすべゆらぎを持っている。ゆらぎの中でも人間の快感覚を刺激し、心地良さと活力を生むのが、 1/f ゆらぎであるが自然界の音、風、光、流れ、波等は全てゆらいでおり、その多くは 1/f ゆらぎになっていて、人間に心地良さを感じさせてくれる。 1/f ゆらぎでは眠気がさし、まだるっこく、ズレ(乱れ)が乱雑で激しいときたなく邪魔になるし、雑音、騒音、不快音になる。
木材のゆらぎは年輪に集中し、等間隔に見えてもズレがあり、それが基本的には 1/f ゆらぎになっている。その年輪が材面に表されるのが木目であり、柾目も板目も、その間隔と木目の流れがともに 1/f ゆらぎになるものが多い。 1/f ゆらぎが人間の快感覚を刺激するのは、人間の生体リズム(心脈、呼吸等)が 1/f ゆらぎになっており、外部のゆらぎと同調し、共振共鳴するからである。木材はイグサ等とともに 1/f ゆらぎが多い材料で、ゆらぎこそが木材の命である。

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6.木材は適度な弾力性で衝撃を緩和する。

木材は衝撃を受けると「局部変形」と「たわみ変形」が起き、これで衝撃を緩和してくれる。たわみやへこみは、厚さ、材種により多少の違いはあるが、建築資材としての機能を失わない適度なたわみとへこみで衝撃を吸収する働きがある。
また、人間は、見たり触ったりするだけでも物の硬さを感じることができるが実験では木材は、硬い軟かいの中間にあり、快、不快感の実験でもやや快適な材料と評価され、感覚面でも人間の生理作用に合っているからと見られている。木材は、衝撃吸収に加え、耐摩擦性、強度、耐久性等、各種機能を適当にバランス良く備えた材料で、住宅材料のマルチ機能材料とも言える信頼のおける材料である。

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7.木材の触感覚の良さは快適・安全のもと。

手や足が長時間接したり、何回も接したりする仕上げ材や家具などは、感触も重要な要素になる。材料に触った時の感覚の中で大切なのは乾湿感と温冷感、硬軟感、粗骨感の良し悪しと言われる。 木材は、乾湿感においては無塗装の場合、さらさらと乾いている感じ気持ちが良く、塗装してあるとやや湿った感じを与え、プラスチックタイル、アルミ、ガラスほど湿った感じが強くなる。温冷感と硬軟感は、各種材料の中でほぼ中間にあり、やや暖かい、やや硬い材で、仕上げ材としては最も評価の高い材料とされる。
粗骨感は、表面の粗さと切断面のうねりに最も関係する。切断面のうねりは針葉樹と広葉樹では多少異なるが、感覚試験では全体にほぼ満足できる粗骨感が認められている。ヌルッとせず、ざらざらもせずという木独特の粗骨感がなつかしさを感じさせてくれる。またこの特性が、床の場合に、やや硬く、ややすべりという快適性と安全性の元となっている。

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8.木の持つ芳香物質が気分を爽快にする。

木は森の中ですがすがしい香りを感じさせるフィトンチットを発散している。これは、植物が絶えず侵してくる微生物等から身を守るためにつくりあげたものと言われている。森林には動物等の屍骸や種々の堆積物があるが、悪臭を感じさせないのは、フィトンチッドの持つ抗菌性や消臭効果、環境浄化能力によるもので、これには木材の色や臭いのもととなる成分が含まれている。これを抽出したのが、精油で、樹種によって異なるが、1本の木に50種以上の成分が含まれ、消臭用、防ダニ用、殺虫用、防カビ、抗菌用に使われている。 新築の家や家具、木製品から臭う木の香りがそれで、防虫等とともに、心のやすらぎやストレスの解消、心身のリフレッシュで爽快な気分にしてくれるもので、一種のアロマテラピーである。

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9.木材はマイナスイオンをもたらしてくれる。

フィトンチッドはマイナスイオンとともにあると思われるが、森林の中のすがすがしさは、マイナスイオンが大変多いからだと言われている通り、木はもともとマイナスイオンを出している。切られて木材として使用されている時でも吸排湿機能に見られる呼吸作用を通して、室内にマイナスイオンを放散してくれる。
また木材は、外の自然が発する超高周波音を室内に取り入れ、電磁波を遮断してくれるが、同時にマイナスイオンも室内にもたらしてくれる。さらに、この超高周波音もゆらいでおり、基本的には 1/f ゆらぎになっているので、五官の快感覚を刺激してくれる。このような効果をもたらす材料の木材が健康推進の最良の素材であることを示している。

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10.木材は人間の情緒を育てる心の健康素材。

古代から人々は森林の中で樹々の緑や動植物と共生し、緑やフィトンチッド、マイナスイオンで快適さを得てきたが、木は切られても生き続け、その本来の力を失うことなく暮らしを豊かにしてくれる。 木材は多くの特性の総和として情緒を育ててくれる。情緒は1人ひとりの育った環境、気候、風景、住居、生活様式、人間関係等の因子で違いはあるが、木の物性が人間の情緒を育ててくれるのは五感に対して総和的な「落ち着き」「安らぎ」「あたたかさ」をはじめとする適度な快刺激を与えてくれるからである。
あたたかく、やわらかく、さらりとした感じの触感覚。視感覚には、木の色彩があり、紫外線を吸収しての自然な光反射、自然が育てた木目の造形や光沢による「あたたかい」「なごむ」「落ち着いた」情緒がある。木材内部の細長い中空の細胞がもたらす「やわらかい」響きを感ずる聴感覚。なつかしさを思わせ、精神的鎮静作用を呼ぶ臭感覚。食器や箸などを通して食事をおいしく感じさせる味覚感がある。 また木造住宅においては、時とともに住んでいる人と家が一体となれるところに情緒がある。毎日の生活が「木」に刻まれ、独自の光沢と表情をもって、日を経るにつれ、表情が魅力的に変容するのも木造住宅ならではのものがある。 これからの住宅に求められるものは、決して機能や性能が中心ではなく、住む人の心と和を育てるもので、情緒的特性こそが生きてくることになる。